2016/7/20

YOICHIRO NISHIMURA​

西村陽一郎  「フォトグラム-光と影が反転した世界-」 前編

※2016年6月24日(金)にみんなのギャラリーで開催したトークショーの内容です。

©写真作品=西村陽一郎 ©会場写真=鈴木淑子

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みんなのギャラリーディレクター 田森 (聞き手) 西村さん本日はどうぞよろしくお願いします。

まず初めに、フォトグラムというのはそもそもどういう技法なのか教えて頂けますか?

 

写真家 西村陽一郎 よろしくお願いします。フォトグラムという技法は、カメラを使わず、直接印画紙に物の影を焼きつける技法で100年以上前からおこなわれているものなんですね。そしてデータにするわけでもなく、フィルムに記録するわけでもないので基本的には1点物になるんです。

 

田森 フィルムで複製できるのではなくて、基本的に1点物の写真なんですね。

 

西村 そうです、フォトグラムはもともとそういうものでした。ですが、フォトグラムを原版にして新たな一枚をプリントしていくというものも作品にしています。フォトグラムの発展形というのでしょうか、後ほど紹介します。

田森 今見ている作品は、これは手ですね。手の影を写し取っている。

 

西村 これが一番シンプルで分かり易いと思いますけど、モノクロの印画紙というのはもともと白い紙なんですね。そして、光が当たった所は薬品で現像すると黒くなる。光が当たっていないところは白いままということになります。この場合私は手を置いていますけども、手で影を作れば影の所は白いままで、手の影以外で光が当たったところは黒くなるということで、影が浮かび上がってくるんですね。

 

田森 影が白くということは、明暗が反転している、ということにもなりますよね。

 

西村 そうですね、影の画なんだけども、明暗が反転しています。

 

田森 手というモチーフは、思い入れがあるモチーフなんでしたよね。

 

西村 そうです。18歳の時に、美学校という学校で受けた、暗室の最初の授業がフォトグラムで、自分の手を印画紙の上に置いて、光をポッと当てただけなんですけども、現像液に浸けたら、ふわあっと、白い手が浮かび上がってきたので、衝撃を受けまして。ゾクゾクするような、その感銘というんでしょうかね、驚きというのは未だに忘れられないです。

 

田森 西村さんの写真は実験的というか、ご自身が行った実験結果を知りたいという、西村さんの情熱が写真から感じられるんですが、やっぱりこの最初の授業が一つの原点となっているのですか。

 

西村 そうですね、原点ですね。闇の中に浮かび上がってくるものを自分が真っ先に見る事が出来る喜び、というんでしょうかね。

客席から すみませんちょっと質問を挟んでいいですか?フォトグラムをやっている写真家というのは沢山いたんですか?私は瑛九という人が思い浮かぶんですけど、その他はちょっと知りません。

 

西村 有名なところですと、マン・レイですね。彼は自分の名前をとってレイヨグラフと名付けましたけども、あれもフォトグラムです。あとはモホリ=ナギ。彼がフォトグラムと名付けました。日本では、今NYにお住まいらしいのですが杉浦邦恵さんという方が有名ですね。若手でも何人かいます。写真家全体の数から考えると多くはないですね。

田森 スキャングラム透過陰画法という名称は今回写真集を作るにあたって設定した名前だったように思いますが。

 

西村 そうです。スキャングラムという言葉はもともとあって、スキャナーを使った撮影技法ということで、CTスキャンとか、医学用語だったらしいんです。スキャナーで撮影した作品を発表してすぐのころは、適当な言葉が分からなかったので、スキャナーを使った写真ですと説明していました。その後、フォトグラムをやっている人見将さんという若手写真家がいるんですけど、彼にスキャングラムと呼ぶことを教えてもらったんです。そういう言葉があるんだったらということで、またスキャングラムという言葉がすごくわかりやすいこともあって、数年前から使っています。透過陰画法というのは、長年に渡って制作していたフォトグラムの延長でスキャングラムに行き着いたこと、つまりフォトグラムと同じようなやり方で、光を当てて影を焼き付けるという写し方を説明するためで、今年になってからスキャングラム透過陰画法というようにしました。

 

田森 今日このイベントもスキャングラム透過陰画法による写真集出版のためのもので、フォトグラムというのはこの技法にも直接つながっているものなんですね。

では、そろそろ次の写真に行ってみましょうか。

西村 この写真は学生にフォトグラムを教えるためにデモで作ったもので、ピントルーペという写真家にとっては見慣れている物なんですが、そんなものも、フォトグラムにしてみると意外な形で現れてきます。

 

田森 先程の手のフォトグラムの、手の周りの黒と比較すると、こちらは薄いグレーですね。

 

西村 そうなんです。フォトグラムというのは、光の量が少ないと、グレーになります。弱い光が当たった場合はグレーに、強い光が当たれば黒くなります。

西村 これも同じく写真のフィルム現像でつかうリールというものです。先程の2枚のフォトグラムは上からの光一灯だけで、シンプルにポンッと当てただけなのですが、これはペンライトを使って、2,3回角度を変えて光を当てているんです。そうすることによって静止したモチーフでも動きが表現できたり、立体感を出したりすることができます。フォトグラムは「光で描く絵」とも呼ばれますが、その名の通り、ペンライトで描いたものになりますね。

 

田森 実際に写しているものは1つの静止した物だけど、角度を変えることで動きを出すことができるんですね。

 

西村 なんというか、即興的な面白さがありますね。一発勝負ですし、光を当てている段階ではそれがどの様な画になるかわからないので、光を感じて行わないといけません。どんなに強い光を当てても、そのときまだ紙は白いままなんですね。薬品を通して初めて画面に変化が起こるので、光で描いている段階では自分の中で想像するしかありません。でまたそれが、想像通りにいくということはあまりなくて。裏切られるというんでしょうか、そういうところが面白いんですね。

 

田森 なるほど。予想しながら描いたものが薬品に浸けて初めてスーッと浮かび上がってくる、それまでは楽しみを我慢しなくてはいけないんですね。

 

西村 そうです、ほんとにこう、見せてくれるっていうんですかね。

西村 これも、手ではあるんですけども、このときは手の影だけではなくて、水のフォトグラムに取り組んでいた頃で、水の存在だけで何か形を作れないかなという試みをしてみようと思ったんです。どうやったかというと、最初に印画紙の上に手を置いてもらって、その上から私が霧を吹く。そうすると手を置いたところだけ水滴がつかないので、水がある所とない所、その差ができた状態を作って写すつもりだったんです。ところが、うっかり手をおいたまま露光しちゃって。引算ができないものですから、失敗したなあと思ったんですが、でもまあどうかなと思って手をどけてもらってもう一度露光して、そして現像したら、思いがけず、自分の中では素晴らしいものができて感動しました。失敗は成功のもとというか(笑)、そういう面白さもフォトグラムにはあるんです。

 

田森 ちなみに、この手は誰の手なんでしょうか。

 

西村 この手は、当時付き合ってた人で…私の妻なんですけども笑

今回の写真集の中に詩を5編書いています。

西村 これはちょっとぼんやりしていますけど、自分自身の横顔です。これは通常の光源とかを使わないで、暗室の中で印画紙を自分のほっぺたに付けて、そのまま外に出て、ちょっと出歩いてしばらくしたら戻って現像したっていうだけの、実験的なものなんです。案の定、外は明るいので真っ黒になってますが、ぴたっと密着しているところは光が入らないので、辛うじて口とか横顔が残っています。また後ろから押さえている手がですね、裏から回り込んできた光で、ぼんやり写っているんですね。

 

田森 しばらくして暗室に戻ったとおっしゃいましたが、その時間というのは、何十秒も外に出て歩き回ったりしたのですか?

 

西村 あいえ、何十秒ではないです。暗室を出て、数歩くらいですね。光の世界でいうとそれだけでもしばらくというか、長く感じるので。

 

田森 ああ、そうか。光の世界ではしばらくという表現になるのですね。

 

西村 やっちゃいけないことをやっているみたいなね。眩しいー!という感じですかね笑

西村 この写真は実は18歳のときに作ったもので、、、31年くらい前ですね。切り紙を使っています。自分にとって初めての展覧会、美学校の写真工房展に出品したもので、当時はとても緊張しました。

 

田森 ストーリー性を感じて逆にめずらしい感じもしますね。

 

西村 そうですね、私の最近の写真からすると。ちょっと気恥ずかしい気もしますけど笑

もともと昆虫とか小さい生き物が好きだったので蝶のモチーフと、下の部分はお米を撒いたんです。お米のフォトグラムですね。

後編に続きます。こちらからどうぞ

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