2016/6/21

​Yoshiyuki Koinuma

肥沼義幸 ー オランダでアーティスト活動を行うということ

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 去る1月に開催したグループ展「Radical Three」でオランダ在住作家、肥沼義幸がMGにて作品を展示しました。

5年ぶりの国内での展示機会となった今展に出展された肥沼のコラージュ作品は、どこか日本人離れした、独特なフラットな世界観が展開されていました。オランダに活動拠点を移して7年、日本国内で活動するよりもシビアな世界で制作活動する彼の、現在までに至る経緯を語ってもらいました。

オランダ国立アカデミー 

 私は武蔵野美術大学の出身ですが、在学中から海外で制作活動したいという意識があり、各国を1人旅で周ったりもしましたが、なんとなく機を伺っている状況が続きました。4年生になったそんな折、先輩からオランダでの滞在制作の話を聞いたことでオランダに興味を持ち、現地を実際に見に行った後、卒業後はオランダ国立アカデミーという機関を受けることを決心しました。

とはいえ、オランダに行くための費用を稼がなくてはなりませんでしたので、実際にアプライして審査に合格したのは美大卒業4年後のことでした。

​ オランダ国立アカデミーという機関は教育機関とは異なり、いわゆるアーティストインレジデンスプログラムを実施しています。アーティストインレジデンスというのは作家が現地滞在し制作できる環境を提供することをいうのですが、オランダ国立アカデミーでは2年間オランダに滞在ができるビザを与え、その間各自に与えられたスタジオで自由に制作ができるというアーティストにとって恵まれた環境を提供してくれます。

およそ50人が在籍しそのうちの半数はオランダ人、残りの半数は世界中から作家が集まります。既に作家として活動している人も多く、表現の追求や新しい刺激を求めてプログラムに参加する人が多くみられます。

教育的な部分もあることはありますが、例えばアカデミーがアドバイザーと呼ばれる批評家や有名アーティストとアポイントを取ってくれて、作品を前に意見を聞くと言うか、交換するといった感じのものです。

​アカデミー時代 ビル・ヴィオラ氏を囲んで Photo by Guy Wouete

 異なる文化圏から来た様々なメディアで制作する作家さんと2年間という時間を共有し切磋琢磨していくことは、本当に素晴らしい時間でした。日本にいたころは、主に日本社会の問題点を自分の感情とミックスさせたような作品を作っており、1つのテーマに固執しがちでしたが、海外に出たことで、自分にとって全てのことが新しく、興味の対象になり得たので、日常の些細なことまでもが作品に繋がるような、よりオープンな制作姿勢になっていったかと思います。オランダで出会った作家たちはそれぞれテーマも表現方法も違い、彼らの作品を見たり、話をしたりする中で受ける刺激もとても大きかったですね。

アカデミー終了、個人事業主として起業することに 

 アカデミーでの2年を終えてからも、自分はこのままオランダに残って活動を続けていくことに決めましたが、滞在を続けるためにはビザを新たに取得する必要がありました。しかも申請するためには個人事業主として起業しなくてはなりませんでした。諸々の準備は当然全て自分でやらないといけません。まずビジネス用の銀行口座をオランダ国内に作り、最低でも約5000ユーロを入れておかないといけません。そして商工会議所でビジネス開始の申請をし、さらに会計オフィスに行って、ビザを取得するためのビジネスプランの作成をしなくてはいけませんでした。そのような準備を経て、2011年から個人事業主としてオランダで起業、アーティスト活動を始めました。

 最初はギャラリーも付いていなかったので、作品の受渡しから、インボイスの作成など全て自分で直接取引していました。作品の価格設定や、運送、そしてマネージメント全般、最初はどうしていいのかさっぱり分かりませんでしたが、色んなアーティストさんの話を聞きながら、それでも1年目の売上は7000ユーロくらいになったと思います。オランダでは3ヶ月に1度確定申告がありますので、そこから結構引かれましたが。作品を販売して頂いた代金で次の作品のための制作費を賄うということには、制作活動していることのリアリティを強く感じるように思います。

2年目、3年目と、状況は常に変わっていく中で、自分で発表できる場所を探して、作品も作っていかなければなりません。例えば裁判所の待合室で展示する機会をいただいたこともあります。4フロアあるすべての階の廊下部分に作品を約50点、3か月に渡って展示させてもらい、そこで販売もさせてもらいました。このようなギャラリー以外の場所での展示機会というのはよくあることで、話をもらったら積極的にチャレンジしてみる気持ちは大事ですね。

​ロッテルダム裁判所 外観

 今私はロッテルダムに住んでいますが、国立アカデミーはアムステルダムにあり、当時は住むところ、そして制作費も支給してくれていました。2011年から自分で全てマネージメントするようになってくると、アムステルダムは物価が高く、制作スタジオを見つけることも困難でした。そこでロッテルダムに移住することになるのですが、当時ロッテルダムにはアーティストインレジデンスが5つくらいあったのです。国立アカデミーと違い滞在できる期間は数か月から長くて1年でしたので、2011年から2014年まではロッテルダム内のアーティストインレジデンスをまるでキャラバンのように転々としながら活動していました。

 

 2014年の9月に友人のイタリア人アーティストとともにアパートを借りて、ようやく落ち着いた制作と生活の拠点ができました。そのアパートは以前ギャラリーがレジデンスとしてアーティストに提供していた部屋で、僕は今そのギャラリーと契約関係にあります。ギャラリストさんと出会ったのは2011年の頃でしたので、縁というか、色んな出会いがあって今に繋がっているような気がしますね。

自宅兼スタジオ

契約ギャラリーでの個展風景

オランダと日本 

 アパートのすぐ近くに日本文化センター松風館という施設があるのですが、数年前に日本の職人さんを呼んで茶室を建てました。そのときに彼らが無許可で労働をしたと国から指摘されてしまい、後日裁判になってしまいました。結果は松風館が勝訴となりましたが、重要な決め手となったのは、オランダにおける日本人の労働に関する1902年に制定された古い条約が生きていたことにありました。この事件は日本でもニュースになったようで、オランダは日本人に対してオープンであり、ヨーロッパの中でも比較的自由に経営ができることが分かった。それでここ数年はオランダで企業する日本の若い人が増えているという状況です。以前よりオランダに住んでいる日本人に対してのこの事件による影響はないように思いますが、オランダで日本人が起業することで新しい関係性やチャンスが生まれることは好ましいことと考えています。

事業を継続していくこと

 今後の展開としてはオランダの周辺の国々で積極的に展示していきたいと思っています。近くジョージアという黒海に面した国で開催されるアートフェスティバルに参加する予定です。世界中から選ばれた10人の作家が10日間でそれぞれの作品を1つ作るというイベントです。国を超えてみればそこには沢山のチャンスがあると思います。自分の足で行ってみて、新しい人と出会い、展示して、作品を見てもらう。そういった活動の継続が大事だと思っています。また今回アートコレクターの敦賀さんから紹介いただいて、5年ぶりに日本で展示することもできました。やはり日本でも新しい作品を発表していけたらと思います。

ジョージアで開催されたアートフェスティバルで制作した自画像

the other artists Interview

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