Exit's Reports 19

 

 

私はこれまで生命の循環などのサイクルを

魚や他の動物など具象的な形象を描くことで表現していました。

 

しかし、抽象的な概念にふれ

どうすれば動物等の具体的なモチーフを描かずに抽象的な表現で世界の成り立ちを

表現できるか考えるようになりました。

 

この作品では、わたしたちのすむ世界における事象の循環や自転、公転を含む回転する様を表しています。

 

画面の構成においては、オプティカルな表現にとりくむことで日本画では取り組まれることの少なかった抽象形状による視覚的な絵画表現の探求という意味をもっています。

 

私は大学院まで進学し日本画を学んでいたのですが、そこで語られる「日本画」は素材論に過ぎませんでした。日本画は明治時代に西洋絵画が輸入されたことで発展した比較的に新しい概念の絵画です。和紙、岩絵具、膠を使うことで日本画家としての体裁を保つのではなく、一人のArtistとして何を表現すべきか考えるようになったこともあり、

画材をアクリル絵具へと移行させました。

 

これには渡米をみこして、アメリカでも手に入る素材に慣れておくという思惑もありました。

 

この表現は今回の展覧会に出展する文様的な形象で画面を覆い尽くす波の表現へと

継承されていきます。

 

 

作品キャプション

vortex

H50cm x w50cm

キャンバス・アクリル絵具・ワニス、2013

Exit's Reports 20

 

今回からは、展覧会への出品作品についてご紹介致します。

 

私はこれまで 、生と死、生命の循環などのサイクルを魚や他の動物など具象的な形象を描くことで表現していました。

その後、禅や哲学などの概念にふれどうすれば動物等の具体的なモチーフを描かずに、

抽象的な表現で世界の成り立ちを表現できるかを考え、作品制作にとりくんでいました。

 

そして、2013の冬に渡米。

NYでは、ミニマルアートやオプアートの作品にふれる機会が増え一時期はそれらの作風に傾倒し基本的なコンセプトは変えずにジョセフアルバースのような色面を構成した作品にとり組んでいいました。

 

しかし、

多種多様な文化圏の人々が混在するNYでは自己のアイデンティティーを見直すことを迫られます。日本人の作品はどうあるべきかと。

 

作家には二パターンいると思うのですが自己の国籍や文化に依拠せず現代に向かい合う作家と自己の国籍や文化を浮き彫りにするなかで現代に向かい合う作家です。

私は後者としての道を進むために日本画の基礎を身につけたのでこれからそれをどう活用するかが課題です。

 

アメリカ美術の特徴の一つは(たくさんある要素のうちのあくまでひとつですが)積極的な否定にあるとおもっています。

「モチーフ選択の否定」

「描くことの否定」

「西洋絵画のコンテクストの否定」

これを「拡張」と捉えてもよいかもしれません。

その上で、場や素材、鑑賞者との関係や反応を追求する過程でコンテクストを構築し

現代の多様な作品群の素地かつくられました。

 

アメリカの現代美術が

ヨーロッパ的な絵画の歴史の否定に取り組んでいたのであればむしろ、日本の美術と向き合うことが一周回って現代美術への足がかりになるのではないかと積極的に考えました。

アメリカ絵画の影響でとりくんだ表現は今回の展覧会に出展する文様的な形象で画面を覆い尽くす波の表現へと継承されていきます。

ですので、この表現は単純な日本的な文様の波ではなく現代絵画を経由して、西洋絵画伝統の遠近法を否定する過程で立ち返ったオプティカルな文様表現なのです。

 

次回はなぜ「波」でなくてはならないのかをご紹介します。

 

 

作品キャプション

The Comforter's Head Never Ached

H102cm x w152cm

キャンバス・アクリル絵具・銀箔・ワニス、2014

Exit's Reports 21

 

私は、2012年から波の作品に取り組んでいるのですが海に囲まれた日本は水害も多いため水にまつわる説話は非常に多く、古事記においては洪水の化身とも解釈される八俣遠呂智や、山佐知毘古と海佐知毘古の話など水に関係する話が散見されます。

平家物語においても壇ノ浦のシーンは非常に象徴的に描かれています。

※1

 

波は日本美術においても象徴的なモチーフです。

葛飾北斎の波濤をかいた「神奈川沖浪裏」が世界的にも有名ですが、私に一番の影響をあたえた波の表現は曾我蕭白の「群仙図屏風」の右隻の呂洞賓とともに描かれた逆巻く波と渦巻く暴風です。

また、近代では加山又造が「春秋波濤」という作品で波の表現に取り組んでいます。

このように「波」は日本美術において繰り返し取り組まれているモチーフなのです。

※2

 

渡米後、アメリカ美術にふれミニマルな作風に傾倒していたのですが自己のアイデンティティーをみなおすなかで立ち返ったのが波の表現でした。

 

私自身、海育ちであり、ダイビングもやりますので海の怖さや面白さが表現に結びついた面もありますが近年でも大規模な津波の被害をうけた日本を表す上では波は無視できないモチーフであると考えたからです。

 

 

作品キャプション

 

Fountain

φ78cm 

キャンバス・アクリル絵具・銀箔・ワニス、2014

 

※1 平家物語 巻第十一上「那須与一」

※2「群仙図屏風」の右隻

Exit's Reports 22

 

今回は画材に関して説明いたします。

 

私は日本画を学んでいたこともあり、長い間、日本画の素材に親しんで制作してきました。しかし、渡米に際しアメリカでも使用できる素材へと画材を変更させました。

 

私が現在、制作に使用している主な素材は

キャンバス、アクリル絵具、スプレーペイント、箔、膠、アクリル溶剤、ヴァーニッシュです。

 

私自身は、和紙と墨とは相性が良いのですが和紙をやめて、キャンバスに描いているのにはいくつか理由がございます。

 

まず一つはその耐久性です。

和紙は、伸縮性に優れ、吸水性が良い反面、湿度の変化に大変に弱い素材です。

湿度と温度の管理が非常に難しく、日本の絵画作品が美術館等で展示されている際に

ガラスケースに入っているのはそのためです。

描き方にもよるのですが私の描法で和紙を使った場合、美術館レベルの保護もなく日本と海外を行き来させるには、あまりに繊細すぎます。

日本から持ち出した際に湿度の低い海外では、最悪の場合、和紙の伸縮の差で画面がつったり、ヒビが入った事がありました。

 

また、

現代美術では多様な素材が使用されていますのでそこまで神経質になる必要はないのですが紙に描かれた作品はドローイングの類とみなされる場合もあり、絵画として一段見劣りして扱われる場合があります。米国では和紙の入手が困難なこともあり、キャンバスに移行しました。

 

描画材のアクリルやスプレーペイントは戦後のアメリカで発達してきた素材です。

商業用絵具として発売された最初のアクリル絵具は、アメリカ合衆国のボクーが開発したMagnaという製品で、溶剤型の絵具でした。

モーリス・ルイス、ロイ・リキテンスタインなどがMagnaを使った作家です。

私は主にgolden社製のものを使用しています。

 

私の専攻していた日本画は江戸後期から明治時代に西洋絵画が輸入されたことで発展したのですが、近年では素材論に堕している嫌いがあります。

 

私の場合は、和紙にしても岩絵具などの日本画の画材にしても「日本の伝統的な」という面を強調するあまりに絵画表現の本質を見失いたくなかったので、今はそれらの資材の使用を止め、アメリカで手に入る素材での表現に取り組んでいます。

 

しかし、箔だけは伝統論を超越して私の表現に必要な素材なので使用しています。

箔には金、銀、銅、白金などがあるのですがその金属質な質感は作品の平面性を際立たせるのにとても大事なエッセンスとなっているからです。

 

最後に、ヴァーニッシュですが近年では使用する作家は減っているのですが

これは西洋画には必要な要素の一つでした。

 

ヨーロッパではギャラリーのオープニングのことをベル二サージュと呼ぶのですがこれは画面の表面にニスを塗って仕上げることに由来しています。俗に、ベル二サージュの呼称が、ヴァーニッシュとなりワニスになったとも言われます。

つまり、作品にヴァーニッシュをかけて仕上るのは西洋絵画の文脈にのとった作法なのです。

 

日本画で培った技術に、西洋絵画の作法、そして、アメリカの画材で描かれているのが

私の現在の作品なのです。

 

 

作品キャプション

The Man who Stole the Sun

H92cm x W61cm

キャンバス・アクリル絵具・銀箔・ワニス、スプレーペイント、2014

 

 

Exit's Reports 23

 

今回は画面の構成に関して説明いたします。

 

画面の構成法は美術史においても

地域や時代によって様々なバリエーションがございます。

 

西洋の美術においては透視図法を用いた空間構成が支配的でした。

空間をより現実に即した見せ方をするために手前のものを大きく、奥のものを小さく描きます。当たり前に聞こえるかもしれませんがこの画面構成が発明されるまでは

遠近感の希薄な象徴的な絵が主流でした。

これは一神教的な神の視点、つまりは一つの支配的な視点を画面に設定することに肝があります。

※1

 

この概念がしっかり確立していたので

ピカソやブラックのように多視点を用いた絵画運動のキュビズムも生まれました。

その後、さらに視点の解体が進み画面上で視点や空間にとらわれない表現がうまれました。ここで再度、空間感の希薄な象徴的な絵が制作されるようになりました。

対して、日本ではもともと透視図法をもっていませんでした。

遠景、中景、近景とわけて構成します。

そのために空間感の希薄な象徴的な絵が主流です。

※2

 

故に、日本の美術表現を突き詰めることがこの点において、西洋の絵画の変遷に外周から到達できるのではないかと考えています。

 

絵画における画面構成は構成主義や抽象表現主義を経てさらに進歩していきます。

 

今回の作品にはこれらの歴史がレイヤーのように折り重なっています。

 

 

 

作品キャプション

What is Essential is Invisible

H92cm x W61cm

キャンバス・アクリル絵具・ワニス、スプレーペイント、2014

※1 アテネの学堂

※2 長谷川等伯

Exit's Reports 24

 

今回は連載の意図と今後の予定をすこし説明致します。

 

私が所属していました日本画科では沈黙は金、雄弁は銀といいますか作品のみで語れという風潮がございます。

 

しかし、作家が自作を語ることで、

鑑賞者が「自由に見る+作家の意図がわかる」という、二度楽しめる構造にしたいと思い

今回の連載をおこないました。

 

日本の芸術文化には「見立て」や「言葉遊び」が多くございます。

カキツバタの花の絵をみて伊勢物語の「東下り」を連想したり

(「唐衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ」に由来)

「山上復有山」とかいて「出」とよませたり、、、、。

※1

 

伊勢物語の引用は今回の作品にはございませんが、

私の作品にも絵解きをしていくような側面がございます。

 

何重にも意味や技法を織り込むものですから作品に込められている意味を知るとより楽しんでいただけると思います。

 

是非、会場まで絵解きに来てください。

 

最後に

私の今後の予定としましては本展覧会の終了後に再渡米しNYにて、グループ展と個展を予定しております。

今回出品している「波」シリーズの新作を発表する予定です。

 

どのように発展していくかは未知数ですが今後も日米問わず活動していく所存です。

今回はその橋頭堡となる展覧会です。

是非、ギャラリーまで遊びにいらして下さい。

 

メルマガでの連載は今回が最後になります。

 

長らくお付き合い頂き

誠にありがとうございました。

※1 燕子花図屏風

出口雄樹

Yuki IDEGUCHI

http://ideguchiyuki.com/

 

1986   福岡県生まれ、ニューヨーク在住

2013   東京芸術大学 絵画科大学院修士課程日本画専攻修了

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