Exit's Reports 13

 

今回は、禅に関して思索を深めていた頃の作品を解説致します。
  
絵画の新たな可能性を追求していた頃、もう一度日本に古典に学ぶ事を思いたち
様々な作品を見、資料を漁っていました。
  
その際に、禅の画題を取り扱った作品が非常に多い事に気がつき禅の問答に関して調べる事にしました。禅の思想には抽象的なものも多く禅宗の修行僧が悟りを開く為に与えられる公案と呼ばれる問の答えなどは一見しただけでは理解できないものも多くあります。
  
そこで自らその画題を扱う事でその理解に努めようとしました。
 
今回の作品の画題は禅の祖である達磨大師です。
 
この作品のタイトルは「濫觴」といい物事の始まりを意味しています。
 
渡米後、とあるポーランド人アーティストの紹介でNYの禅寺で座禅に取り組む事になるのですがまた機会があればそのエピソードもご紹介したいと存じます。
 
この作品以降、古典から発想した作品にしばらく取り組む事になるのですが

次回もこの流れで制作した作品をご紹介致します。
 
 

作品キャプション
”濫觴” 
麻布・和紙・白亜・膠・顏彩・墨・金箔・ニス
H92.5cm×W72.8cm、2011、個人蔵

 

Exit's Reports 14

 

今回は、禅に関して思索を深めていた頃の作品を解説致します。
 
この作品は禅の公案「南泉斬猫」(無門関・第14則)を題材にしたものです。
タイトルにあるように猫を殺すというセンセーショナルな内容ながらもこの公案は禅の問答のなかでも非常にユニークでことさらに私の心を引きつけました。

概略は以下のとおりです。
ある日、中国の僧南泉普願のもとで修行していた弟子達が
仏教の「悉皆成仏」という概念をもとに猫にも仏性があるかと議論していました。
みかねた南禅が猫をとらえ彼らにその議論で会得したものを明らかにせよと迫ります。
返答がなかったため、南泉は猫を斬って対立の原因を断つ事を教えました。
 
その夜、高弟の趙州がきたので南泉が昼の一件を問うと、趙州は草鞋を頭上にのでて出て行ってしまったのです。
それをみて南泉は「彼がいれば猫は殺されずにすんだのに」と嘆息したという故事です。
 
長谷川等伯の作品にもこの題材を扱ったものがあり彼は猫に斬りつけようとする和尚を描くことでこの題材に挑みました。
 
昨年、ようやくこの問答の私なりの解を得たのですが当時のわたしは抽象的に
この概念を扱う事で理解に努めました。
 
私は仏教徒でも禅僧でもありません。
しかし、東洋人が長い歴史のなかで取り組んだ思想を自己のうちに
取り込みたいという思惑があり禅問答にとりくんでいました。
 
この作品以降、さらに古典から発想した作品に取り組む事のですが
次回もこの流れで制作した作品をご紹介致します。

 

 

作品キャプション

”南泉斬猫” 

H120cm×W120cm、麻紙・和紙・白亜・膠・顔彩・墨・金箔・ニス、2012、作家蔵

Exit's Reports 15

 

今回は、私が2012年に二ヶ月以上をかけてヨーロッパを旅して帰国し、
最初に取り組んだ作品を解説致します。 
 
これは三枚一組の作品なのですが今回のものはそのうちの一枚です。

 

その旅では英、仏、独、西班牙、伊を訪れました。
ヨーロッパの様々な史跡をおとずれ様々な美術作品や都市の様子をつぶさに観察しながら長い歴史の中の栄枯盛衰の様を体感してきました。
 

そして、
ヨーロッパの旅で様々なヴァニタス画を見ました。
これは寓意的な静物画の作品群で「メメント・モリ」は西洋美術においても
重要なモチーフの一つであり、
描かれているモチーフは人生の空しさの寓意です。
それらの絵画に触発されて描いたのがこの一枚です。
 

この作品は食物連鎖を意味しています。
死は全てのものに訪れますが自然の中では、死も循環の一部です。
死ぬものがいれば生まれるものがある。
 
全ての資金がつき
バケットを一週間で一本しか食べないような時代錯誤な旅をしてきたので精神的にも肉体的にもぼろぼろになってしまい、帰国後も長い間、経済的にも肉体的にも回復できずにいました。
 
そのなかで装飾的な日本の表現とヴァニタス画が融合された作品がうまれました。
 
この後、さらなる表現を探求する為にカラバッジオや伊藤若冲の模写に取り組んだりしていたのですが次回はヨーロッパの影響が抜けて来た頃に描いた作品を紹介します。

 
 
作品キャプション

”動的平衡の輪廻” 
H151cm×W61cm / 麻布・白亜・膠・顏彩・墨・金箔・ワニス / 2012 / 個人蔵

Exit's Reports 16

 
今回は、GTS観光アートプロジェクトの一貫として墨田川流域をフィールドワークし
作品を制作する展覧会の為に制作した作品をご紹介します。
 
私はこれまで生命のサイクルに関した作品を制作して来たのですが、

この作品の制作当時、生命の根本にある水に興味もちだしていました。

 
福岡と長崎の川と海に親しんで育ったので
自然と意識が水に向いたのかもしれません。
 
上京してからは玉川上水や利根川、荒川の近くに住んでいました。
(今はハドソンリバー沿いに住んでいます。)
 
この展覧会のために隅田川のフィールドワークをおこないその治水工事の歴史を知り
この二つを掛け合わせる形でこの作品を発想しました。
 
また、波は日本美術の歴史の中でも様々な作家が取り組んだモチーフであり挑むべき課題でもあります。
 
波は、生命のソースであると同時に津波や洪水など死を招くようなアンビバレントなモチーフでもあるです。
  
この後、波や循環といった要素を作品のなかで更に練り上げていくのですが

次回はその作品を紹介します。
 
 
作品キャプション
”動的平衡の輪廻” 
H140cm x w140cm
麻布・白亜・膠・顏彩・墨・ワニス、2013、個人蔵

Exit's Reports 17

 

今回は、
前回の波の作品をへて制作した作品について紹介します。
 
私はこれまで生命のサイクルに関した作品を制作して来たのですが、
前回の波の作品の以降どうすれば直接に動物等を描かないでそれらを表現できるか
考えるようになりました。
 
前回の波のイメージにひまわりのレイヤーを掛ける事で生まれたのがこの作品です。
 
ひまわりは生命の象徴です。
種子のの部分には金箔を配し普遍性や強さを表しています。
 
また同時にチェルノブイリの除染の為にひまわりを大量に植えたエピソードから
原発の問題を抱える日本にとってもある種の記念碑的な花としてもひまわりを描いています。
(重金属集積植物であることから
放射性物質を含んだ水溶液を吸収する可能性があり
注目されましたが実際に効果は低いようです。)
 
この後、波や循環といった要素を作品のなかで更に練り上げていくのですが
次回はさらに発展させた作品を紹介します。
 
 
作品キャプション
”カオス” 
2013
H140cm x w140cm
麻布・白亜・膠・顏彩・墨・金箔・ワニス

Exit's Reports 18

 

今回は、

前回までに紹介いたしました作品変遷の紆余曲折をへて至った作品について紹介します。

 

私はこれまで生命の循環などのサイクルに関連した作品を制作してきました。

 

しかし、禅をまなび、抽象的な概念にふれ

どうすれば動物等の具体的なモチーフを描かずに抽象的な表現で世界の成り立ちを

表現できるか考えるようになりました。

 

この作品では、わたしたちのすむ世界における事象の循環や自転、公転を含む

回転する様を表しています。

 

生命を形作るDNAでさえ回転する螺旋構造をえがいています。

(このころの私は回転という事象に本当に取り憑かれていました。)

 

そして、前回もふれましたがひまわりは生命の象徴です。

種子のの部分には金箔を配し普遍性や強さを表しています。

 

世界は偶然性や偶有性、それと自然界の秩序によって成り立っているアンビバレントな状態です。

 

この整然と並んだひまわりは自然界の秩序を一定ではない渦の回転は偶有性※を表しています。

 

タイトルは「読み手に開かれたピュシスとノモス」という難解な題名をつけています。

 

「読み手に開かれた」とは自然界は観察者(読み手)によっていかようにでも解釈する余地を残しているという点で「開かれ」ているという意味です。

 

また、ごく簡単にいうとピュシスは「自然」をノモスは「人為」を表す古代ギリシャの哲学用語です。

 

そして、メインの色彩である青色は中世ごろまで聖母マリヤの衣の色や、瑠璃光菩薩の額の白毫に璃色のラピスラズリが用いられる等美術品や信仰の対象としても特別な色彩です。(瑠璃光という語自体が青い光を意味する場合もあります。)

 

フェルメールも愛した青い顔料ですが人口の青が生成されるまではウルトラマリン(海を越えた青)として重宝されていた色でもあります。

 

近代ではイヴ・クラインの青が印象的です。

  

画面の構成においては、

オプティカルな表現にとりくむことで日本画では取り組まれることの少なかった抽象形状による視覚的な絵画表現の探求という意味をもっています。

 

この後、これらの要素をさらに展開させていくのですが、

次回はそれらの作品を紹介します。

 

Exit’s reports、次回もお楽しみに!

 

作品キャプション

 

「読み手に開かれたピュシスとノモス」

H227cm x w181cm

麻布・白亜・膠・顏彩・墨・金箔・ワニス、2012

 

出口雄樹

Yuki IDEGUCHI

http://ideguchiyuki.com/

 

1986   福岡県生まれ、ニューヨーク在住

2013   東京芸術大学 絵画科大学院修士課程日本画専攻修了

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