Exit's Reports 01

 

こんにちは。出口雄樹です。

2015年6月の私の個展開催まで、

私のこれまでの作品を少しづつ解説していきたいと思います。

 

まず、私が大学で在籍していた日本画に関して軽く説明したいと思います。

日本画ときいて、水墨画や北斎などを思い浮かべる方も多いかと思います。

諸説紛々あるとは思いますが、基本的には「日本画とは、明治期に西洋画に対して発明された技法」です。

 

文明開化期の日本は、西洋からの文化的強襲を受けます。

更に、優れた技術をもつ西洋諸国においつけ追い越せと様々なものを吸収していきます。

もちろん江戸時代にもある程度の文物は輸入されてはいましたが、大政奉還以後、価値観の大きく変わった日本ではこの西洋文化の流入は文化に携わる人間には深刻でした。

徒弟制度をしいていた狩野派などは、幕府の後ろ盾をなくし存亡が絶望的となってしまったのです。(現在では狩野派の秘方は継承されていない)

 

また、当時の画家は、西洋から入って来た写実的な絵に度肝を抜かれた訳です。

そこで、日本にも古来から伝わる技法をつかって西洋に負けない抵抗感のある画面を作れないかというトライアルの下生まれたのが日本画なのです。

つまり、西洋画に対する日本画です。なので、厳密には大和絵などの伝統的な日本絵画とは一線を画す表現なのです。

 

その意識のもと、私が学部一年の時に描いた絵が今回の作品です。

日本画の技法を駆使し画面の抵抗感をだす事に注視して作品をつくるとこんな絵ができあがってしまう訳です。

ある意味、脳みそを一切使わず身体的反射だけで描いた作品です。

 

次回以降は私の作品がここから如何に変化していくか紹介していきたいと思います。

 

 

作品キャプション”涅槃” H70×W150cm, 雲肌麻紙・膠・墨・岩絵の具, 2007, 個人蔵

Exit's Reports 02

 

日本画を学び始めて次に注目したのは和紙でした。

通常、日本画では雲肌麻紙とよばれる近代に開発された厚手で丈夫な和紙を使うのですが、私は模写や雲肌麻紙の補強に使う薄手の和紙に魅力を感じました。

 

雲肌麻紙が機械で漉かれるのに対し薄手の和紙は職人の手漉きのものが多く全国各地に様々な種類が存在します。その薄く透ける和紙を何種類も張り合わせその各層ごとに描写を施したのが今回の作品です。

 

紙の魅力を引き出す事がメインテーマだったので、薄塗りと線描で画面が構成されています。

しかし、この線で描かれた細かい形の集積で絵を描く事は鑑賞者にとっては作家の苦労が追体験でき、見た目にも面白いのですが、作家にとっては非常に幼稚な作品です。

 

なぜなら、容易に画面の密度を高める事ができなおかつ達成感があるからです。

幼稚だと分かっていても、楽しいので、なかなかどうして止められないのです。

 

 

次回は、この容易な作風の罠からなかなか抜け出せない私の作品が如何に変化していくか紹介していきたいと思います。

 

 

作品キャプション

“I am he as you are he as you are me and we are all together”

H38×W92 鳥の子紙・薄美濃紙・楮紙・膠・墨・水干絵の具・スプレー 2008 個人蔵

Exit's Reports 03

 

この作品は”アニ眼”と題したシリーズです。

制作されたのは2008ー2009年にかけてのなですが、この頃、私は日本画だけでなく七宝、ステンドグラス、 写真の現像、印刷など様々な技法を積極的に学んでいました。

また、新潟の和紙工房で開かれていた生紙(きがみ)の研究会に参加するなど作品のテーマではなく、素材と向き合う事に注視していたのです。

 

そこで生まれたのはこの作品です。これは紙の面白さと、七宝で体感したガラスの質感をいかすためにアニメのセル画に着想を得て制作したものです。

彩色した和紙の上にガラスをおき エナメル塗料で動物を描き入れています。

テーマ性こそ希薄ですが、 世の中に様々ある素材の中から自身の作品に接続可能な素材を探すトライアルでもあったのです。

 

次回は版画の可能性を求めて取り組んだ作品を紹介したいと思います。

 

作品キャプション

”アニ眼ーペンギン”  ”アニ眼ー虎”

ガラス・エナメル塗料・和紙・インク、2008ー2009、個人蔵

Exit's Reports 04

 

今回は版画の作品に関してです。

 

版画と一口に言っても様々な技法がありその版の仕組みから、凸版画(木版)、凹版画(銅版)、平板画(リトグラフ)、孔版画(シルクスクリーン)のら四つの技法があります。

 

私が今回の作品に用いたのはシルクスクリーンの技法で、これはメッシュ状の布製版に、

インクが通過する穴とインクが通過しないところを作ることで版画の版を製版し、印刷する技法です。

シルクスクリーンは版画技法の中でも比較的近代に考案され1950年代後半にはラウシェンバーグやアンディウォーホールらが積極的に作品に取り入れていました。

現代では村上隆氏が制作に用いいるなど工房制作にも適した版画技法です。

版画は、同じ図像を複数枚制作する事が可能なうえにバリエーションを変えたバージョンの制作が可能なので一枚絵の作品にない魅力があります。

その為、多くの芸術家が版画作品に取り組んできました。

また、普段は絵筆をとって直にキャンバスと格闘している芸術家にとって版画の技法は、

いつもとは異なる表現が生まれる可能性を秘めたチャレンジでもあるのです。

 

今回の私の作品は日本画的な装飾とグラフィティを制作していた頃に用いていた図像のパターンの融合を試みた作品です。

 

次回はこれまでの素材技法研究の後に作品がどのように変化していくかを紹介したいと思います。

 

作品キャプション

”無題”、紙・インク、2009、作家蔵

Exit's Reports 05

 

今回はインスタレーションの作品に関してです。

 

 

インスタレーション(installation art)とは1970年代以降に一般化した現代美術の表現手法の一つで特定の屋内や屋外に、様々な仕掛けやオブジェを配しその空間自体を作品として体感させる芸術の事です。

 

基本的にインスタレーション作品は一時的に設置される作品です。

展示空間と密接に結びついているので、他の場所へ設置した際に全く同じ作品空間を再現する事は困難なので、新しい空間として再構成する必要があるからです。

 

この作品は、日本建築の持つ空間構成を現代的に再構成することを主眼に於いて「茶室」を制作しました。

狭い和室、にじり口や露地といった茶室の構成要素は空間体験としては非常に面白い構成になっていて現代美術に流用しても効果的に機能するのではないかという試みです。部屋の光源を極端に減らし、水を貯めた浅いプールの上に建物が建っています。

茶室の壁面は黒い塩化ビニール製の反射材をはることで、壁面と水面に光が乱反射するので、部屋に入った際に空間把握がし辛くなっています。

そして、光る飛び石をわたり、にじり口をくぐると落ち着いた空間に至るという構成です。

 

私はこの作品を作る際に一時的に「陸羽」というグループ結成しました。

興味のある方は以下のページをご覧下さい。

http://ideguchiyuki.com/riku.php

 

次回は「陸羽」として中之条ビエンナーレに参加した際の作品を紹介したいと思います。

Exit's Reports 06

 

今回はインスタレーションの第二弾です。

 

2011年の中之条ビエンナーレに参加した際に制作した作品に関してご紹介します。

この作品はランドアートとインスタレーションの折衷作品です。

 

ランドアートとは1960年代末から実践された屋外にて土木工事に匹敵する大規模な制作を行い設置される作品です。

ミニマリズムというムーブメントを継承する形で発生してきたランドアートは、ミニマリズムが重視していた作品が設置される場所と作品との関係を拡張し大地自体が支持体であり、同時に素材となります。

実際の作品は美術館やギャラリーの外に設置されそのアーカイブが美術館やギャラリーで展示されるという奇妙な鑑賞形態は、当時の芸術における制度の枠組みを顕在化させる要因にもなりました。

 

今回の作品も前回同様に私が主催した「陸羽」による制作です。

一見すると四角い矩形ですが、側面に下へ降りる階段があり室内に入れるようになっています。

半地下の室内に先細りの奥行き6mほどの空間が広がっています。

地下に潜るという身体的行為と精神の底に降りていく精神的作用をリンクさせるという主旨で制作をしました。

 

しかし、私達はこの作品を通し抗えない自然の恐ろしさを痛感しました。

この制作期間中におこった東日本大震災の為に、当初予定していた電気配線が行われず、またこの年の群馬の記録的な豪雨の為にこの作品は半壊状態となってしまったのです。

作品に関わる事象は様々に想定されますが、日本の自然は”アートワールドの枠組み”などどこ吹く風でいとも簡単に飛び越えてくるのです。

私は日本画の習得を媒材にし屏風や襖絵などを含む日本の空間構成を起点にインスタレーション作品の制作を行ってきました。

 

次回以降は日本画の作家としてキャリアをスタートさせた私の平面作品に話を戻し、

如何にしてそれらを発展させていくかをご紹介します。

 

作品キャプション

”赫土庵” ミクストメディア、2011

出口雄樹

Yuki IDEGUCHI

http://ideguchiyuki.com/

 

1986   福岡県生まれ、ニューヨーク在住

2013   東京芸術大学 絵画科大学院修士課程日本画専攻修了

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